アロエベラ健康研究室
DHA・EPA
●DHA・EPAってなに?
 DHAとは「ドコサヘキサエン酸」、EPAとは「エイコサペンタエン酸」の略称で、ともに、あじ、いわし、さばなど、青魚に多く含まれている"あぶら"(オメガ3脂肪酸)のことです。DHAやEPAは脳や神経組織、目、心臓、精子、母乳など、体の重要な器官などに多く含まれており、それらを健やかに保つためには欠かせない大切な栄養成分です。また、「血液の流れを助ける」、「脳や神経組織の働きを助ける」、「精神の安定に関わる」などの作用も持っており、近年、その研究に期待が寄せられています。
●あぶらの話<1>
 「あぶら=太る」、「あぶら=健康に良くない」というイメージを持っている人も少なくないかもしれません。しかし、脂質は体を構成する材料になったり、エネルギーとして使われたりと、私たちの体にとって大切な栄養素です。
  あぶら(油脂)は主に「脂肪酸」から構成されていますが、脂肪酸の多くは、常温(25℃)で固まりやすい性質(固体)を持つ「飽和脂肪酸」と、固まりにくい性質(液体)を持つ「不飽和脂肪酸」の2つに大きく分けられます。また、融点の違いだけではなく、その性質や構造の違いによりさらに分けることができます。
 動植物に含まれるあぶらには複数の脂肪酸が混ざり合っており、その性質や栄養はそれらの脂肪酸の構成比率によって大きく変わります。

 例えば、身近なところでは、バターやラードなどの動物性脂肪には飽和脂肪酸が多く含まれているため、常温では固体の状態を保っています。
 不飽和脂肪酸は、その性質によってさらに「オメガ3脂肪酸」、「オメガ6脂肪酸」、「オメガ9脂肪酸」の3つに分類され、私たちが普段調理に使う大豆油、ひまわり油、コーン油などの食用油(サラダ油)にはオメガ6脂肪酸(リノール酸など)が、オリーブ油などにはオメガ9脂肪酸(オレイン酸など)が多く含まれているので、常温では液体の状態を保っています。
魚介類に多く含まれているオメガ3脂肪酸(DHAやEPA)も不飽和脂肪酸に数えられますが、オメガ6脂肪酸やオメガ9脂肪酸よりも、サラサラとした性質を持っています。

●あぶらの話<2>
 近年、日本人の食生活が欧米型に変化してきたことに伴い、食事カロリーに占める脂肪の割合が戦後の7%から25%を超えるまでに増加したと言われています。
その内訳を見てみると、増加した脂肪の多くは動物性脂肪やオメガ6に属する脂肪酸で、魚介由来のオメガ3脂肪酸(DHAやEPA)は減少傾向にあることが判明しました。

 厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」では、健康などへの影響から、オメガ6脂肪酸の過剰摂取を指摘しています。反対に、魚介由来のオメガ3脂肪酸(DHAやEPAなど)は、健康への有用性から、積極的な摂取を推奨しています。「あぶら=健康に悪い」というわけではなく、大切なのはその摂取バランスだと考えられています。
●魚油のチカラ
 1970年代にデンマーク領グリーンランドでダイヤーバーグ博士らによって行われた疫学調査において、DHAやEPAを含むアザラシの肉や魚を主食としているイヌイット族は、肉食を中心とするデンマーク人に比べて動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞といった血管系疾患の発症頻度が低いという報告がなされました。
この報告により、オメガ3脂肪酸及び魚油に多く含まれるDHAやEPAが持つ作用が注目を浴びることとなりました。
「グリーンランドエスキモーにおける血漿脂質の脂肪酸組成」
 DHAやEPAの摂取に関して厚生労働省の「食事摂取基準」は、目標摂取量として「1日1グラム以上が望ましい」と発表しています。また、WHO(世界保健機構)、FDA(米国食品医薬品局)、米国心臓協会(AHA)なども健康への有用性からその積極的な摂取を推奨しています。
DHA及びEPA摂取量の50パーセントタイル値

●DHA・EPAの摂取
 脳や神経組織、目など、体の重要な器官などに多く含まれているDHAやEPAですが、ヒトの生体内ではほとんど生合成できず、生体内に含まれるDHAやEPAはそれらを含む魚介類の摂取量を反映していると言われています。

 魚のDHAやEPAは消化吸収率が高く、摂取量のおよそ60%以上とされています。
しかし、調理の際、加熱により脂質が流出してしまうため、刺身などの生の魚で摂れるDHAやEPAの量を100%とすると、煮物でおよそ10%減、焼き物でおよそ15%減、揚げ物でおよそ50%減と調理方法によってその摂取量は変化してしまいます。
 DHAやEPAを無駄なく摂取するためには、サプリメントで摂取するのが効果的ですが、魚油を1日3グラム以上摂取すると、血液粘度を下げ、出血のリスクが増大する恐れがあるとも考えられているため、過剰摂取には注意が必要です。
また、魚介類に対するアレルギーを持っている、出血が続いている、病気治療において薬を服用しているなどの場合も注意が必要でしょう。
●血流をスムーズにする働き
 近年の日本人は、食生活の変化に加え、たばこ、飲酒、ストレス、睡眠不足、過労など、様々な要因から血中の中性脂肪や悪玉(LDL)コレステロールが増え、いわゆる"ドロドロ"血液になりがちだと言われています。
 DHAやEPAは赤血球の膜や血管壁を柔らかくし、中性脂肪や悪玉(LDL)コレステロールを減らしたり、善玉(HDL)コレステロールを増やしたりして、血液をスムーズに流れるようにすると考えられています。DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸の摂取は、血中中性脂肪値の低下、不整脈の発生防止、血管内皮細胞の機能改善、血栓生成防止作用など、生活習慣病の予防に効果があると考えられています。

●脳・神経を助ける働き
 脳は私たちの思考、感情、言語、記憶などを司る重要な器官です。DHAは脳に多く含まれており、その機能にも深く関わっていると考えられています。
 オメガ3脂肪酸のうち、脳血液関門※を通過することができるのはDHAのみです。脳血液関門を通過したDHAは細胞膜リン脂質に取り込まれ、神経細胞の活性化や神経伝達物質の伝達性を向上させ、記憶や学習能力にも影響を与えると考えられています。
 また、DHAやEPAの血流改善作用も脳の働きをサポートしており、DHAやEPAの摂取と加齢に伴う記憶力や集中力の低下との関係などについても研究が進められています。
※脳血液関門とは、血液中の有害な物質が自由に脳まで到達しないように働いている機構のことです。

●心や気持ちを和らげるチカラ
 過度なストレスを受け続けて心が疲れると、気分が沈んでしまい、何に対しても興味が持てず、日々の生活を楽しめなくなってしまいます。そして、それがひどくなると、食欲の低下や睡眠障害、慢性疲労など、様々な症状に至ることがあります。
 日本人のおよそ6.7%が生涯に一度はうつ病を患うと言われているほど、私たちはストレスの多い社会で生活しています。オメガ3脂肪酸(DHAやEPAなど)の摂取はうつ症状を緩和する可能性があると言われており、近年その研究が進められています。

●視覚機能への影響
 DHAは目の網膜や視神経にも多く含まれていることから、目の発達や視覚機能にも深い関わりがあると考えられています。また、乳幼児期のDHAの摂取による視覚機能の発達や、加齢とともに現れる目の症状への働きなど、DHAの健康に対する有用性が報告され、その研究が進められています。
◆参考文献
・矢澤一良「ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)の生理機能」日本食品科学工学会誌Vol.43,No1,(1996)
・高木智久「消化器疾患に対するサプリメントを科学する第4回EPA/DHA」GI Res15巻2号2007年4月1日
・伊藤浩「そうだったんだ!脂肪酸」2013年5月11日
・JORN DYERBERG,M.D.,DMSc. & RICHARD A. PASSWATER, PH.D. THE MISSING WELLNESS FACTOR-EPA AND DHA 2012
・消費者庁「食品機能性評価モデル事業」の結果報告 平成24年4月
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準」2010年度版
・日本医師会、日本薬剤師会、日本歯科医師会「健康食品・サプリメント(成分)のすべて」2011年10月10日
・キャサリン・E.ウルブリヒト、イーサン・M.バッシュ「ハーブ&サプリメント」2007年1月10日

●DHA・EPAの健康情報
◆論文紹介
「高齢者における血漿リン脂質長鎖ω-3脂肪酸と単発心房細動の関連:心臓血管の健康調査」
「より高いRBC EPA + DHAは、より大きな総脳体積及び海馬体積と対応する:WHIMS-MRI試験」
「赤血球ω-3脂肪酸のレベルと脳老化促進のマーカー」
「必須脂肪酸:それらは発展途上国における乳幼児の成長と発達にどのように影響を与えるのだろうか?文献レビュー」
「双極性障害のためのオメガ-3:躁病及び双極性うつ病での使用におけるメタ分析」
「乳児用調製粉乳のLCPUFA補充と視力のメタ分析」
「歯周病、炎症性腸疾患、およびメタボリックシンドロームに関連したドコサヘキサエン酸、炎症、および細菌性腸内毒素症」
「気管支喘息児におけるω-3多価不飽和脂肪酸が豊富な魚油の食事補給」
「肥満児童の体重減少および脂質代謝に対するDHA摂取の潜在的効果」